2022.04.25
ハイパーサイトWシリーズの帯電防止性と新しい用途
当社のカーボンナノチューブ複合樹脂-ハイパーサイトWシリーズ-は、発塵が少なく静電気特性に優れた帯電防止樹脂材料として、HDD分野をはじめとする電子デバイス分野のトレイなどの用途に、20年以上にわたり展開してきました。今回はそのハイパーサイトWシリーズの優れた帯電防止性を生かした、新しい用途の可能性についてご紹介します。
一般に二つの物体が接触すると、一方からもう一方へ電荷が移動し、物体が離れたあともそれぞれに電荷が残ることで、帯電した状態になります。このような帯電は、常に私たちの身の回りに存在していて、時には数百から数千ボルトにも達し、大きな放電を起こします。冬にパチッとくるあれですね。このような帯電や放電といった電静電気現象は、電子デバイスを破壊したり、センサーを誤動作させたり、様々なトラブルの原因となります。
こういった静電気トラブルを防ぐための材料が帯電止材料です。
ハイパーサイトWシリーズは、マトリックス樹脂中にカーボンナノチューブのネットワークが緻密に張りめぐらされています。この微小で多数の起点から、素早く電荷を逃がすことにより僅かな隙間もなく、完全かつ瞬時に電荷を逃がすことが出来ます。
たとえば帯電防止材料の上を紙が繰り返し滑って摩擦するとき、①紙と成形体の間で電荷が移動し、②その電荷が残って帯電し、②次いで成形体を通して除電されます。つまり①移動、②帯電と③除電が同時に進行するわけですが(図1)、このとき帯電防止材料の除電が遅かったり不完全だと、大きな摩擦帯電が残ります。
ハイパーサイトWシリーズは先に述べた緻密なネットワーク構造により、自分が帯電しないだけでなく、紙の摩擦帯電も抑制することができるのです(図2)。このほかに、大量のパチンコ玉が高速で転がるような場合も同様に、ハイパーサイトWシリーズはパチンコ玉を帯電させることなく、効率よく除電することができます。